研究課題

「新しいd電子系超伝導体の探索」

遷移金属がもつd電子が物性を担うd電子系の超伝導体は、物性物理学において中心課題の一つであり続けてきました。銅酸化物にはじまり、Sr2RuO4、Co水和物、βパイロクロアOs酸化物、鉄系、最近ではカゴメのバナジウム化合物に至るまで、興味深い超伝導体が見つかり続けています。そこでは、電子間に働く強いクーロン斥力、磁性、軌道、スピン軌道結合といったd電子ならではの特徴によって、様々な変わった超伝導が現れます。また、銅酸化物における高温超伝導の発現機構がいまだに議論されていることからもわかるように、d電子系超伝導は、未解明の点が数多くある、懐の深い物理現象でもあります。我々のグループは、「新超伝導体の探索」によって、d電子系超伝導の全容解明に貢献することをを目指しています。

これまでの研究で、d電子系超伝導の理解を一気に進めるような、画期的な超伝導体の発見は残念ながらできていないのですが、それでもいくつかの新超伝導体を発見することができました[1-4]。新超伝導体探索の研究の面白さの一つは、ゼロ抵抗や完全反磁性といった、普通の物質には決して現れないような劇的な物理現象を、自らが合成した試料において発見できる点にあると思います。しかも、それらの劇的な現象には、我々の住む世界のうち、ミクロな部分の性質を説明する量子力学の世界が、マクロな大きさをもつ物質に現れています。電子の性質の奥深さを直接感じられる、とても興味深い物性です。今後も、一つでも多くの新超伝導体を発見できるよう、様々なアイデアや手法を駆使して取り組んでいきます。

これまでに見出してきた超伝導体の例と結晶構造.ScIrP:Tc = 3.4 K,PtSbS:Tc = 0.15 K,Nb2Pd3Te5Tc = 3.3 K, Sc6FeTe2Tc = 4.7 K.

[1] "Superconductivity in the Hexagonal Ternary Phosphide ScIrP",
Y. Okamoto, T. Inohara, Y. Yamakawa, A. Yamakage, and K. Takenaka, Journal of the Physical Society of Japan 85, 013704 (2016).

[2] "Superconductivity in PtSbS with a Noncentrosymmetric Cubic Crystal Structure",
R. Mizutani, Y. Okamoto, H. Nagaso, Y. Yamakawa, H. Takatsu, H. Kageyama, S. Kittaka, Y. Kono, T. Sakakibara, and K. Takenaka, Journal of the Physical Society of Japan 88, 093709 (2019).

[3] "Superconductivity in Nb2Pd3Te5 and Chemically-Doped Ta2Pd3Te5",
N. Higashihara, Y. Okamoto, Y. Yoshikawa, Y. Yamakawa, H. Takatsu, H. Kageyama, and K. Takenaka, Journal of the Physical Society of Japan 90, 063705 (2021).
(JPSJ注目論文:そっくりな元素からなる物質に現れた超伝導と奇妙な絶縁体状態)

[4] "Superconductivity in Ternary Scandium Telluride Sc6MTe2 with 3d, 4d, and 5d Transition Metals",
Y. Shinoda, Y. Okamoto, Y. Yamakawa, H. Matsumoto, D. Hirai, and K. Takenaka, Journal of the Physical Society of Japan 92, 103701 (2023).
(物性研ニュース:さまざまな磁性元素を含む新しい超伝導体ファミリーの発見)

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